AIが完璧な戦略を描いても、なぜプロジェクトは失敗するのか? ~最後の1マイルを「やり抜く」人間力~
おはようございます!
一緒にやり抜くマネジメントコーチ、福井俊治(しゅんじ)です。
「AIがあれば、どんな複雑な問題も解決できる」 近年、ビジネスの世界ではそんな期待感が、まるで万能薬のように語られていますね。確かに、AIの能力は目覚ましく、膨大なデータから問題点を発見し、課題を抽出し、合理的な改善策を提案する、といった分析能力においては、すでに人間の能力を凌駕していると言えるでしょう。
AIは、いわば「世界で最も優秀な参謀」です。私たちが目指すゴールまでの最短・最適ルートを、瞬時に、かつ客観的に描き出してくれます。
しかし、ここで一つの大きな問いが生まれます。 これほどまでに優秀な参謀が手掛けた「完璧な地図」を手にしているはずなのに、なぜ、多くのプロジェクトは道半ばで停滞し、目標達成という頂にたどり着く前に遭難してしまうのでしょうか。
それは、どんなに精巧な地図も、実際にその道を一歩一歩、歩むのは「感情」を持った生身の人間だからに他なりません。
私が大好きなF1の世界に、非常に分かりやすい例えがあります。 現代のF1チームは、何千ものセンサーから得られるデータを元にして、実際にコースで走る前に、シミュレーターで実際に近い形で走行することが可能です。「理論上の最速ラップ」も演算できると思います。
しかし、実際のレースは、シミュレーターの中では起こり得ないことの連続です。 突然の雨、タイヤの予期せぬ摩耗、ライバルの予測不能な動き、そして何より、ドライバー自身のプレッシャーや焦りといった「心の揺れ」。 この不確実性に満ちた現実世界。これこそが、私たちがビジネスや人生で直面する「ラストワンマイル」の正体です。
AIは、このラストワンマイルでドライバーに寄り添い、「大丈夫だ、自信を持て」と声を掛けてはくれません。タイヤが悲鳴を上げている状況を共有することも、ゴール前の極限状態で「あとコンマ1秒を絞り出せ」と魂を鼓舞することもできないのです。
問題発見から改善策の検討まで、AIは最高の仕事をするでしょう。しかし、その策を現場に落とし込み、予期せぬトラブルに対処し、時にチーム内の軋轢を乗り越え、そして何より、心が折れそうになる自分自身を奮い立たせて「やり抜く」。 この最も泥臭く、最も人間臭いプロセスにおいては、合理性だけでは決して埋められない領域が存在します。
そんな時、私たちの力を最大限に引き出してくれるのが、AIという優秀な参謀とは別の存在、すなわち「伴走してくれる人間」の力なのです。
そのパートナーは、あなたの弱さや不安を受け止めた上で、「それでも、あなたならできる」と信じ続けてくれます。計画通りに進まない現実を共に直視し、「じゃあ、どうしようか」と次の打ち手を一緒に考えてくれます。その存在は、客観的なデータが示す「正解」ではなく、あなたの心に火を灯す「自信」を与えてくれるのです。
AIが私たちの強力な武器になることは間違いありません。優秀な参謀として、その分析と思考力は最大限に活用すべきです。 しかし、その武器を手しても、最後に決め手となるのは、私たち人間の力です。そして、その孤独な戦いにおいて、隣で共に汗を流し、声を枯らして応援してくれるパートナーの存在こそが、目標達成というゴールテープを切るための、最後の、そして最強の推進力となります。
テクノロジーがどれだけ進化しても、最終的に物事を成し遂げるのは、人の想いと、人と人との間に生まれる熱量です。その人間的な力を信じ、頼れる環境を作ることも考えてみて下さい。
今日も一緒にやり抜きましょう!
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