なぜ、F1ドライバーはパワーを失っても走り続けるのか?~絶望的な状況で「今、できること」に集中する技術~

おはようございます!

一緒にやり抜くマネジメントコーチ、福井俊治(しゅんじ)です。

私事で恐縮ですが、実はここ数日、自分でもコントロールできないほどの強い疲労感に襲われています。まるで、自分自身のパワーユニットにトラブルが発生し、アクセルを踏んでも全くスピードが乗らない。そんなもどかしく、孤独な感覚の中にいます。

きっと、あなたにもこんな経験があるのではないでしょうか。

鳴り物入りでスタートしたプロジェクトが、中盤で推進力を失ってしまう。あれほど燃え上がっていた情熱がなぜか冷めてしまい、行動が鈍くなる。周りは猛スピードで駆け抜けていくのに、自分だけが取り残されていくような、あの焦燥感と無力感。

それは、F1レースの最中に、突然パワーユニット(エンジン)の出力が低下してしまったドライバーの心境にとてもよく似ています。

ストレートでいとも簡単にライバルに抜き去られていく。無線からは「ノーパワー!」という、悲痛な叫びが響き渡る。勝利という目標が、一瞬にして遠く霞んでしまう、そんな絶望的な状況です。

しかし、そんな時でも超一流のドライバーとチームは、決してレースを諦めません。

彼らは、この絶望的な状況をどう乗り越え、どう戦い抜くのでしょうか。

その行動の中にこそ、私たちが停滞期から抜け出すための、極めて実践的なヒントが隠されています。

1. ゴールを瞬時に再設定する

まず彼らがやることは、「勝利」という当初の目標を、頭の中から一旦消去することです。そして、「この状況下で達成可能な、最高の目標は何か?」を瞬時に再設定します。

「10位入賞で、1ポイントでも持ち帰る」

「このマシンを無事にガレージまで運び、次のレースのためのデータを収集する」

彼らは、不可能な目標を追い続けて心をすり減らすのではなく、達成可能な新しい目標に切り替えることで、混乱した思考をリセットし、やるべきことを明確にするのです。

2. データに基づき、冷静に現状を把握する

ドライバーが焦りを感じる一方で、ピットでは、エンジニアたちが猛烈な勢いでデータ分析を行っています。

「問題はどこだ?」

「このまま走り続けたら、完全に壊れてしまうのか?」。

彼らは、感情的にならず、客観的なデータに基づいて、今自分たちが置かれている状況を正確に把握しようとします。

私たちも同じです。疲労の原因は何か?肉体的なものか、精神的なものか。まずは冷静に、自分の状態を分析することが重要です。

3. 「今、できること」に100%集中する

パワーを失ったドライバーにはエンジンを直すことはできません。しかし、彼に「できること」は、まだ残されています。

それは、残されたパワーを最大限に活かす、完璧なドライビングに集中することです。症状を緩和できる方法はないか、セッティングや、ドライビングを可能な限り調整します。

派手なオーバーテイクはできなくても、今この瞬間にできる、地味で、泥臭い作業を、淡々と、しかし完璧にこなすのです。これこそが、私たちが停滞期に行うべき、最も尊い行動です。大きな成果は出なくても、今できる目の前のタスクを、一つひとつ丁寧に片付けていく。

4. 「戦略的リタイア」という勇気ある決断

そして、時には、チームはドライバーに「リタイア」を指示します。それは、レースを諦めたのではありません。このまま走り続けて、エンジンを完全に破壊してしまえば、今後のレースにまで影響が及んでしまう。そう判断した上での、未来を見据えた「戦略的撤退」なのです。

私たちも、これ以上無理をすれば心が壊れてしまう、と感じた時には、勇気を持って「完全に休む」という決断が必要です。それは、次のレースで再び最高のパフォーマンスを発揮するための、極めて重要なマネジメントなのです。

もし今、あなたが自分自身のパワー不足に悩み、前に進めないと感じているのなら。

どうか、絶望しないでください。

それは、あなたのレースが終わったという意味ではありません。

まずは、今のあなたに達成可能な、小さなゴールへと目標を再設定する。

そして、今の自分にできることを、一つひとつ、淡々とこなしていく。

時には、未来のために、勇気を持って休む。

その地道で泥臭い走りの先に、必ずや、チェッカーフラッグは待っています。

大切なのは、どんな状況であれ、自分自身のレースを「やり抜く」ことなのですから。

今日も一緒に、やり抜きましょう!

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